強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
そういえば、水族館でも今と同じような感覚になった気がする。

胸が苦しくなるような切ない気持ち。

今の幸せが消えてしまいそうでこわくなる。

お母さんのときみたいに、真夜もいなくなってしまったら……。


「行きたいところ決まった? 特にないなら俺が決めるけど」

そう言って真夜は、朝刊と飲み終えたマグカップを持ってイスから立ち上がる。そのままキッチンへ向かおうとする背中にかけよると、私は後ろから思い切り抱き付いた。

「明?」

そんな私の突然の行動に、真夜が困惑したような声で私の名前を呼んだ。

「私、真夜と一緒にいたい」

「えっ……ああ、今日は一日一緒にいられるから、どこ行く?」

「そうじゃなくて」

真夜のお腹に回した腕にぎゅっと力を込めた。その力が強すぎたせいか真夜の口から「うっ……」と苦しそうな息がもれる。

「……おい、明。苦しい……。口からさっき食べたパン出てきそう」

「あっ、ごめん」

私はパッと手をはなした。

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