強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
私は、どうだろう……。

いいお母さんになれるかな。

亡くなった母みたいに、病気で辛かったはずなのにそんな素振りはひとつも見せずにいつも笑顔で、優しくて、穏やかで。自分のことよりも私のことを考えて、大切に想ってくれて……。


『お母さんなら大丈夫よ、明ちゃん』


そのとき、不意にそんな母の言葉を思い出した。

それと一緒に思い出した記憶では、病室のベッドで横になっている母の手を私がぎゅっと握り締めていて……。


『明ちゃんが二十歳になるまでは生きていないとね。明ちゃんの振り袖姿きっと可愛いんだろうなぁ』


これはたぶん忘れていた記憶の一部かもしれない。

今までずっと思い出すことができなかったけれど、不意に思い出した……。

< 191 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop