強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
それから玉城さんは、 Viola Luna へ戻ることになり病室を後にした。真夜が入院したことにより今後の予定のキャンセルや調整をしなければならないらしい。

真夜と二人だけになった病室で、私は、ベッドのそばに置かれているパイプ椅子にそっと腰を下ろした。

「ごめんな、明。心配かけて」

「ううん。とりあえず無事でよかった」

私がそう答えると、点滴をしていない方の真夜の手が不意に伸びてきて私の手に触れた。そのままぎゅっと握られる。

「俺が出張に行っている間、何か変わったことあった?」

「ううん、特には……あっ」

そういえば、真夜に大切な報告があることを思い出した。

「変わったことというか、真夜に大事な話がある」

こんなタイミングだけど話してもいいのかな。戸惑いながらも、私は、真夜の手をそっと自分のお腹へと持っていった。


「私、妊娠しているかもしれない」


そう告げた瞬間、私のお腹に触れている真夜の手がピクッと動いた。

「それ本当か?」

「うん。まだ自分で検査薬を使って調べただけなんだけど」

「そうか」

真夜が静かに頷いた。

けれど、そこから言葉が返ってこない。

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