強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
真実
*
――七年前のあの日は、東京に雪予報が出た寒い冬の日だった。
高校に通っていた私のもとへ、入院中の母の容態が急変したと父から電話が掛かってきた。
今すぐ病院へ来るように言われて、私は学校を早退してすぐに病院へと向かった。
けれど、予報通り東京に降った雪のせいで電車は遅延して、ダイヤが大幅に乱れていた。駅は人で溢れ、なかなか電車に乗ることができない。
ようやく乗れた電車で、病院の最寄駅まで向かったけれど、私が着いた頃には母はすでに息を引き取っていた。
私は、母の最期の瞬間に間に合うことができなかった。
病室のベッドの上では穏やかな表情で目を瞑っている母の姿があった。
あまりにも穏やかだから、少し待っていれば『おはよう』なんて言って目を覚ますような気さえした。
でも、そっと触れた母の右手は冷たく固かった。
そこにはもう私のよく知る母の温もりは残っていなくて。
それに気が付いたとき、母はもう二度と目を覚まさないのだと理解した。