強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
そういえば以前、真夜はこの腕時計を知り合いに貸していると言っていた。

でも、どうして私の学習机の引き出しの中で、ハンカチに大切に包まれて入っていたんだろう。

不思議に思いながら腕時計を見ていると、その針が止まっていることに気が付いた。

その時刻は十時五十三分で、日付の数字は四のままで止まっていて……




『俺がいない間、この腕時計を明に預けるから。俺だと思って持っていて』




その瞬間、忘れていた当時の記憶が戻ってくるのを感じた。


――そうだ、思い出した。


真夜がバリへと旅立つ日の空港で、私は、真夜からこの腕時計を預かったんだ。


真夜が日本へ戻ったら、私はこの腕時計を真夜に返すはずだった。


それまで大切に持っていようとハンカチに包んで引き出しの奥に入れたんだ。

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