強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
ずっと一緒に
*
『待って、真夜』
明は忘れてしまったけれど、俺は今でもあの日のことを鮮明に覚えている。
――七年前。
バリへ発つ俺を追いかけて、明が空港までやって来た。
見送りになんて行かないと言っていたはずなのに。
明は、瞳に涙をたくさんためて駆け寄ってくると、勢いよく俺の胸に飛び込んできた。
『見送りに来てくれたのか?』
そう問い掛けると、明は頭を大きく振った。
『違う。……お土産、欲しいもの言うの忘れたから、伝えにきただけ』
『なんだそれ』
もちろん、そんなことは嘘だとすぐに気が付いた。
見送りに来ないと言っていたはずの明が、俺を追い掛けてここにくるための口実だって。でも、俺はその嘘に乗ることにした。
『それで、わざわざ伝えにくるほど欲しいお土産って?』
『……』
『もしかして、めちゃくちゃ高いものねだるつもりじゃないだろうな』
『……』
何を言っても明は無言のまま、ただ俺に抱き付いていた。