強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
けれど、搭乗予定の飛行機の離陸時間が近付いてきて、俺は明をそっと引き剥がした。

『時間だからそろそろ行くけど。お土産は何か適当に買ってくるから、いいこで待ってろよ』

俺は、明の髪をくしゃっと撫でた。

『それじゃあな、明』

正直、これ以上一緒にいると俺も明との別れが辛くなりそうだった。

仕事で三年間バリへ行くことが決まったとき、真っ先に明のことが思い浮かぶほど、俺だって本当は明と離れることが辛かった。


俺のそばには明がいる。それが当たり前だったから。


それでも俺は、そんな自分の感情を押し殺して、いつも通りクールな態度を貫いて、明のそばから立ち去りたかったのに。


『待って、真夜』


背を向けて歩き出そうとした俺の服を、明の手が引っ張って引き止めた。


『私、真夜のことが好き。ずっとそばにいたい。だから、真夜が日本に戻ってくるの待ってる』


――ずっと分からなかった。

明は、どうしてそんなに一途に俺のことを想ってくれているのか。

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