強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
特別に優しくした覚えもなければ、ピンチを救うヒーローにだってなった覚えはない。


俺はただ、明のそばにいただけだ。


それなのにどうして明は、こんなにも俺のことだけを想い続けてくれるのだろう。


そんな明の一途な気持ちに愛しさが込み上げてきて、胸の奥が熱くなった。

気が付くと俺は振り返って、明の身体を強く抱き締めていた。


『――ずっと一緒にいよう、明』


口から自然とそんな言葉がこぼれ落ちていた。


『俺も明が好きだよ。明のそばにずっといたい。……三年後、俺が日本へ戻ってきたら、結婚しよう』


抱き締めていた明の身体を少し離して、彼女の顔を覗き込んだ。

すると、たぶん俺の言葉が予想外だったのだろう。明は、呆然とした様子で俺を見上げると、しばらくしてからようやく口を開いた。


『……もしかして、今のプロポーズ?』

『そのつもりだったけど』


俺はもう一度、明の瞳を見つめながら伝えた。


『明、俺と結婚しよう』


明は、瞳にためていた涙をポロポロとこぼしながら何度も頷いた。そして震える声で俺に伝えた。

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