強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
『約束だよ。真夜が日本に戻ってきたら、私を真夜のお嫁さんにしてね』
『ああ、約束だ』
俺は、左手首につけていた腕時計を外すと、針の動きを止めた。そして、それを明の手に握らせる。
『俺がいない間、この時計を明に預けるから。俺だと思って持っていて』
そう伝えると、明は手の中にある腕時計を見つめた。
『でも、この腕時計は真夜のお気に入りでしょ。真夜が好きなブランドの限定ものだって言って、いつもつけていたのに』
私が持っていていいの?と、不安そうに俺を見上げた明に俺は微笑む。
『だからこそ明に持っていてほしいんだ。日本に戻ってきたらすぐに明に会いにいくから』
腕時計の日付と時間は、今この瞬間で止めてある。
三年後、俺たちがまた会うときから時間を動かそう。
そうしたら俺と明はもう幼馴染じゃない。
結婚して夫婦だ。
だから、そのときまでこの腕時計は明に持っていてほしい。
『分かった。私、ずっと待ってる。だから約束だよ、真夜。絶対に私のこと迎えにきてね』
けれど、その三年後。
俺のもとに腕時計は戻ってくることはなかった――……