強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~



「暇だ……」

病室から見える外の景色は、まるで静止画のようにさっきから何も変わらない。

思えば、社会人になって約十年が経つけれど、ずっと仕事に追われていて、これほどまでにのんびりと過ごしたことは一度もなかったよう思う。

何もやることがなさ過ぎて、七年前の空港でのことを思い出してしまった。


明はもうこのままあの日のことを思い出してくれないのだろうか……。


左手首を見つめながら感傷に浸っていると、コンコンと病室の扉がノックされた。返事をすると、ゆっくりと扉が開く。

「失礼いたします。姿月総支配人、退院の手続きが終わりました」

現れたのは秘書の玉城だった。

入院中に受けた精密検査の結果も特に異常はなかった。

胃潰瘍の方も薬のおかげで順調に完治してきているし、少しずつ食事も取れるようになってきて、予定通り俺は退院することになった。

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