強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「そろそろ帰るぞ」

振り返ると、そこには真夜がいる。

彼のすぐ後ろには、雨に濡れた桜の木が、雲の隙間から差し込む光に照らされて輝いて見える。すると、風に吹かれて舞っていた花弁がひとつ、真夜の頭にそっと乗った。


真夜の名前の由来は、彼が産まれた時刻が真夜中だったからだそうだ。

ふと真夜の名前についても気になって、おじさんに尋ねたらそう教えてもらった。そのことを初めて知った真夜は『単純な名付けだな』と少しふて腐れながらも笑っていた。


「真夜、ちょっと屈んで」

「え?」

私は、真夜の頭に手を伸ばすと、彼の栗色の髪に乗っている桜の花弁を手でそっと掴んだ。離すと、ひらひらと風に乗って飛んでいく。それを見ながら真夜が呟く。

「もうすぐ一年か。俺たちが結婚して」

「そうだね」

大きく頷くと、風に舞う桜の花弁を目で追いかけていた真夜の視線が私へと向けられた。

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