強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
そんな不安が頭をよぎったとき、玄関から微かに物音が聞こえた。

ソファから立ち上がり、廊下へ出て玄関へと向かうと、そこには靴を脱いでいるスーツ姿の真夜の背中があった。


……よかった、無事に帰ってきた。


ホッと胸をなでおろすと、靴を脱いだ真夜が私を振り返る。

「あれ。明、まだ起きてたの」

どうやら、もう寝ていると思っていたらしい。玄関まで迎えに来た私を不思議そうな表情で見つめている。

「真夜、今日遅かったね」

「ああ。急な会食が入って……あ! そういえば連絡するの忘れてた」

ごめん、と真夜が申し訳なさそうな表情を見せる。

「いいよ、別に」

たぶん忙しくて忘れていたのだろう。

大丈夫だよ、とさらっと答えながら、真夜の背中を両手で押して廊下を進む。そのままリビングに入ると、ダイニングテーブルの上のラップのかかった料理に真夜が気が付いた。

「もしかしてこれ俺のだよな」

「うん。でも、気にしなくていいよ。これはまた明日の料理に使うから」

「使うって?」

「えーっと……」

今日の晩ご飯は筑前煮を作った。保存がきくから明日の晩ご飯にそのまま出してもいいけれど、違う料理に作り替えるのもいいと思う。

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