強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「例えば、カレーにリメイクしてもいいし、味噌汁の具に混ぜてもいいかもしれない」

「へぇ。さすが和食料理屋の娘」

「それ関係ないから」

和食料理屋で板前をしている父からは一度も料理を教わったことはない。

子供の頃から入退院を繰り返していた母と、仕事が忙しい父は、あまり家にいなかった。だから、自分でできることは自分でやらないといけなかったし、料理も自分の分を作っていたら自然と上達しただけ。

「せっかくだからひと口もらおっと」

真夜は片手でネクタイを緩めながら、もう片方の手でお皿のラップを外すと筑前煮のごぼうをひょいとつまみあげた。それを口の中へ入れる。

「おっ、うまい。さすが明。料理のセンスは久志さん譲りだな」

もぐもぐと口の中のれんこんを食べながら、真夜は片手でワイシャツの第一ボタンを外した。それからスーツの上着を脱ぐと、ダイニングテーブルのイスの背もたれにかけようとして何かを思い付いたのか「あ」と声を上げる。

「そうだ。これ明にあげようと思ったんだ」

そう言って、スーツの内ポケットから何かチケットのような紙を取り出した。

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