強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
結婚生活
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ピピピピ……という電子音で目が覚める。
カーテンの隙間からこぼれる眩しい光に目を細めつつ、枕元に置いてある目覚まし時計へと手を伸ばした。瞬間、左手の薬指のシルバーリングがキラッと光る。
「……私、結婚したんだ」
結婚式からすでに一ヶ月が経とうとしている。
それなのに、こうした起き掛けのぼんやりとした瞬間は、いまだにあの日のことを夢だと勘違いしてしまう。
けれど、左手のシルバーリングがその証で。
「これ、いくらぐらいしたんだろう」
仰向けに寝転んだ体勢のまま左手を持ち上げると、どの角度から見てもキラキラと輝くリングを見つめる。
全周に隙間なく同じサイズのダイヤモンドが並んでいるこのマリッジリングは、ハリウッド女優も身に付けていることで有名なアメリカのラグジュアリーブランド。
真夜がわざわざアメリカまで行って購入してきてくれたらしい。値段は聞いていないけれど、たぶんすごく高いと思う。
こんなに高額な結婚指輪を貰ってしまったことに最初は戸惑った。
もしも落としたり、汚したり、壊したりしたらどうしよう……。
そう思ったらこわくなって、結婚式の翌日に指輪を外してボックスヘと収めた。
けれど、それに気が付いた真夜に左手をつかまれて、強引に指輪を薬指へと戻されてしまった。
“結婚したんだから指輪は常につけていること”
そんな約束をさせられてしまい、それ以来、私は結婚指輪を外すことができなくなった。