強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「おい、なんか言え」

なかなか言葉を返さない私に、目の前の真夜が不愉快そうに眉根を寄せた。そして、不意に両手で私の頬を掴むと、そのままびろーんと横に引っ張り始める。


「いたたたたたた」


そんなに強い力は加えられていないから叫ぶほど痛くはないけれど、つい悲鳴が漏れてしまう。

「にゃにすんにょやめへひょ」

どうして突然頬をつねられたのか分からなくて、抵抗の言葉を口にするけれど、両頬をつねられているせいで喋りづらい。

「やめへひょ」

すると、ようやく私の頬から真夜の手が離れた。

つままれていたせいで軽く痛む両頬を手でさすっていると、真夜の右手が今度は私のおでこにそっと触れて、そのまま私の前髪をかきあげる。そして、ぐっと顔を近づけてきた。


「――俺は好きだよ、明のこと」


そんな言葉のあとで、私のおでこに落ちてきたのは真夜の唇。ちゅっと音をたてて、すぐに離れていく。

「……」


い、今のは何だ⁉

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