強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
その不意打ちの行動に私の心臓はドキッと波打つ。

身体が固まってしまって動けない。


すると、私の前髪をかきあげていた真夜の手が移動して、私の頭にそっと乗った。そのままポンポンと優しく撫でられる。

「ビュッフェのチケット二枚あるから、誰か誘って食べにおいで」

真夜はそう言うと、ダイニングテーブルの上にチケットを置き、リビングを後にした。

一方、取り残された私は、まるで石にでもなったかのようにその場から動くことができない。


‟俺は好きだよ„


さっきの真夜の言葉が頭からはなれない。


なんだよなんだよ真夜のばか。あんなのずるいよ。

片想いしていた頃にあれほど欲しかった言葉を今になってさらっと言うなんてひどい。

好きってなに?

本気で言ったの?

それとも、私をからかっただけ?


あの一言で私の心はかき乱された。

真夜のことが分からない。

そもそもこの結婚だってよく分からない。

真夜の性格を考えたら親に結婚相手を決められて素直に同意するはずない。反発して受け入れないはずなのに、どうして親の言いなりになって私と結婚したんだろう。


「……真夜のばか」


どうしてそんなに簡単に‟好き„なんて言うんだ。

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