強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
『明ね、真夜のことが好きだよ。だから、真夜のお嫁さんになりたい』
初めて真夜に告白をしたのは六歳のときだった。
『そっか。明は俺のことが好きなんだ』
『うん、大好き。だから大きくなったら明を真夜のお嫁さんにしてね』
七つ年上の真夜はそのとき十三歳で、年齢のわりにだいぶ大人びていた彼は幼い私の告白をさらっとかわした。
『うーん、それはどうかな』
『だめ?』
『だめじゃないよ。でも、実は俺のお嫁さん候補はたくさんいるんだ』
『えー、そうなの?』
『うん。だから明も俺のお嫁さん候補に加えてあげるから、今は自分をしっかりと磨くんだ』
『磨くって?』
『例えば、明が苦手な鉄棒ができるようになったり、明が嫌いなブロッコリーを食べられるようになったり、お父さんとお母さんとの約束を守ったり、勉強を頑張ったり、自分で髪を結えるようになったり、そういうことかな。明が素敵な女性になったら、俺のお嫁さんに選ばれるかもしれないよ』
それから真夜に言われた通り、私は頑張って逆上がりができるようになったし、苦手なブロッコリーも克服した。
素敵な女性になれば真夜のお嫁さんになれる。
そう信じながら、それからも数えきれないくらい何度も真夜に告白をした。でも、答えはいつもはぐらかされてばかりで、一度も‟好き„と返してもらうことはなかった。
……それなのに、あんなにさらっと言うなんて。
真夜は、とてもずるい。