強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
その後、お昼休憩を終えた私たちは経理部のあるフロアへと戻ることにした。
けれど、その途中で何やら社内が異様に騒がしく、慌てた様子であることに気が付く。
――何かあったのかな?
そう思ったとき、隣を歩いていた千華ちゃんが何かを思い出したのか、突然「あー!」と大きな声を上げた。
「ど、どうしたの⁉」
そのあまりにも大きな声に私は驚いて千華ちゃんを振り返る。すると、何やら激しく動揺している千華ちゃんが私の肩をぎゅっと掴んだ。
「大変ですよ、明さん。今日! 今日でした!」
「今日って、何かあるの?」
首を傾げる私に、千華ちゃんが興奮気味に答える。
「優愛がうちの会社に来ているんです!」
「ユア……」
って、誰?
「えっ。明さん、もしかして優愛のこと知らないんですか」
「う、うん。ごめん。知らない。有名人?」
そう尋ねると、目の前で呆れたように深いため息を返されてしまった。
「明さん本気で言ってます? 本当に優愛知らないんですか?」
「は、はい。ごめんなさい。存じません」
あり得ないとばかりに詰め寄られて、ついたじたじになってしまう。
「東雲優愛といえば、今をときめく人気ファッションモデルです。最近、パリのファッションショーで有名ブランドのランウェイを歩いたってことで話題にもなっていたじゃないですか」
「そ、そうなんだ」
ぜんぜん知らなかったけれど、とりあえずすごい人らしい。