強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「でもそんな有名人がどうしてうちの会社に来てるの?」

「それなんですけどね。広報部にいる同期から聞いた話によると、うちの会社の新商品の口紅のイメージモデルに優愛が起用されるらしいです。そのことで近々、優愛がうちの会社に来るとは聞いていたんですけど、それが今日でした」

なるほど。

この社内のざわつきは人気モデルが来ているからだったんだ。


「ああ、優愛を生で見たい~」


千華ちゃんがひどく悔しがっているけれど、そろそろ経理部に戻らないといけない。私たちは廊下をさらに進むとエレベーターへと乗り込んだ。

「優愛といえば、恋人と結婚の噂があって一時期仕事をセーブしていたんです。でも半年ぐらい前に破局報道があってから、またファッション紙やCMとかでよく見るようになりましたね」

「そうなんだ」

上昇するエレベーターの中で、千華ちゃんが教えてくれる情報に、私は耳を傾ける。

「ちなみに、優愛の結婚間近だった恋人っていうのが、お金持ちのかなりのイケメンらしいですよ」

「へぇ」

「私が読んだ週刊誌には顔と名前は伏せられていたんですけど、確か年齢は優愛と同じ三十一歳。英語が堪能で、仕事でバリに住んでいたこともあるみたいです」

「バリ?」

「はい。実家がホテル会社を経営しているみたいで、系列のホテルがバリにもあるそうです。優愛の恋人はそこで働いていたらしいです」

「ホテル会社……」

思わず‟勘„というものが働いた。

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