強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
薄暗い車内でハッと顔を上げた。
仕事終わりの明が会社から出てきたのを見つけて、クラクションを軽く鳴らす。
すると、俺の車の存在に気が付いた明が、シフォンスカートの裾をひらひらとさせながら小走りでこっちに向かってきた。
……かわいいなぁ、と思う。
明は、自分の丸みのあるフェイスラインに、目尻の下がったタレ目が嫌いだとよく言っていた。けれど、俺に言わせるとそこがかわいいと思う。
笑った顔がとにかく好きだ。困って泣きそうな顔をされると守ってやりたくなる。
「なんで真夜がいるの?」
助手席のドアを開けてやると、そこに乗り込んできた明が不思議そうに俺を見つめる。
「仕事が早く終わったから。明を迎えに来た」
「ふーん」
シートベルトを締めながら明が頷く。俺はエンジンをかけるとハンドルを握った。
「何か食べて帰ろうか」
そう提案すると、なぜか重たいため息を返される。
「どうして今日に限って、真夜のほうが早く仕事が終わって迎えに来るのかなぁ」
いけなかったのか?
せっかく迎えに来てやったのにひどいことを言うやつだ。
「晩ご飯は家で食べる。それと、ケーキ屋さん寄って」
「ケーキ食べたいのか?」
「違うよ」
もぉーっとなぜか明が不機嫌な声をあげる。