強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~



薄暗い車内でハッと顔を上げた。

仕事終わりの明が会社から出てきたのを見つけて、クラクションを軽く鳴らす。

すると、俺の車の存在に気が付いた明が、シフォンスカートの裾をひらひらとさせながら小走りでこっちに向かってきた。


……かわいいなぁ、と思う。


明は、自分の丸みのあるフェイスラインに、目尻の下がったタレ目が嫌いだとよく言っていた。けれど、俺に言わせるとそこがかわいいと思う。

笑った顔がとにかく好きだ。困って泣きそうな顔をされると守ってやりたくなる。


「なんで真夜がいるの?」

助手席のドアを開けてやると、そこに乗り込んできた明が不思議そうに俺を見つめる。

「仕事が早く終わったから。明を迎えに来た」

「ふーん」

シートベルトを締めながら明が頷く。俺はエンジンをかけるとハンドルを握った。

「何か食べて帰ろうか」

そう提案すると、なぜか重たいため息を返される。

「どうして今日に限って、真夜のほうが早く仕事が終わって迎えに来るのかなぁ」

いけなかったのか?

せっかく迎えに来てやったのにひどいことを言うやつだ。

「晩ご飯は家で食べる。それと、ケーキ屋さん寄って」

「ケーキ食べたいのか?」

「違うよ」

もぉーっとなぜか明が不機嫌な声をあげる。

< 46 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop