強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
それから明の道案内でケーキ屋へと向かう。

到着すると、明だけが車から降りてお店へ向かった。しばらくして、受け取ったケーキを大事そうに抱えた明が戻ってきて、車に乗り込むと助手席に座る。

「他に寄るところは?」

「もうない」

「じゃあ帰っていい?」

「うん」

明の許しをもらえたので、マンションに向かって車を走らせる。


ハンドルを握りながら、窓の外の景色を見つめている明の横顔をチラッと盗み見た。何か考え事でもしているのか、その表情はどこかぼんやりとしている。


「……ねぇ、真夜」


ふと名前を呼ばれた。

「なに?」

そう返すけれど、明から言葉がなかなか戻ってこない。

「どうした?」

もう一回尋ね返すと、「なんでもない」と明は頭を振った。


……最近、こういうことがよくある。

何か言いたそうにしているのに、言いづらいのか黙ってしまう。


そういえば、子供の頃から明にはそういうところがあった。


『別に、寂しくなんてない』


あれは何年前のことだっただろう……。

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