強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
『今日、お店で会食してるんでしょ。それなのに真夜、こんなところに来てもいいの?』

『いいの、いいの。親父たちの話聞いててもつまらないし。それよりも久しぶりに明に会いたくなって、こっそり抜けてきた』

『……ふーん』

そう答えて、明は俯いてしまった。

そんな彼女の様子を横目で見た俺は、寝転んでいたベッドから起き上がる。

『おばさん入院したんだって? 寂しがってる明を慰めてやるから。ほら、ここに座りな』

俺は座っているベッドの隣をポンポンとたたいた。すると、明は分かりやすく拒否反応を見せた。

『慰めるってなに?』

『ん? ぎゅーって抱き締めてあげようと思って。だからほら、はい。お隣どうぞ』

『……やだ。真夜、お酒くさい』

『ひっでー』


思い返せば、この頃から明は以前のように俺のことを好きだと言わなくなった。

それどころか、少し避けられているような気がして、寂しくも感じていた。けれど、明もそういうお年頃になったということだと思うことにしていた。


たぶん会う機会が減ったせいもあると思う。

明は中学生になって部活を始めたし、俺も大学生になり勉強やサークル活動、加えて家業を継ぐため親父の仕事に付いていくことも多くなり、互いに忙しくなった。

だから、以前のように頻繁に顔を会わせることはできなくなった。


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