強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
寂しいと言って、素直に俺に泣きついてきてくれたら、手を握ったり、背中を擦ったり、抱き締めたりして慰めてあげられるのに……。


『あー、眠くなってきた』


わざと大きくあくびをしながら、俺は明のベッドに再び仰向けに寝転んだ。

『飲み慣れてない酒を飲まされたせいで急に眠気がきた。ってことで、少し寝るわ』

『えっ、ちょっと真夜』

俺は目を閉じると、すーすーと寝息をたててみる。

『寝るの早っ』

呆れたような明の声が聞こえた。

もちろんそのときの俺は寝てなんかいない。ただ目を閉じて寝たふりをしていただけ。

強がりな誰かさんが寂しいと素直に言ってくれないから、仕方なくこんな嘘をついてそばにいることにした。


しばらく狸寝入りを続けていると、ベッドのスプリングが軋む音がして、明がちょこんとすみっこに座ったのだと分かった。

明は、俺が完全に眠りに落ちていると思ったのだろう。


『真夜』


呟くように俺の名前を呼んで、明の手が俺の手をそっと握る。

やっぱり寂しかったんだろうな。

鼻をすする音が聞こえて、俺の手を握りながら明はこっそりと泣いていた。


< 52 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop