強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
明が、俺のために選んでくれたものなら、俺は何でも嬉しい。

「今すごーく欲しいものってある? 何でもいいよ」

「そうだなぁ……」

俺に何かプレゼントをしたい明の気持ちに応えたくて、欲しいものを考えるけれど、やっぱり何も出てこない。


でも、ひとつ思い浮かんだ。


「……腕時計」


明の瞳を見つめてそう告げると、彼女の視線が俺の手に注がれる。

「腕時計かぁ。でも、真夜、持ってるでしょ。ほら、昔よくつけてたのあったよね。真夜のお気に入りのブランドの限定もののやつ」


――覚えていたのか。


俺のお気に入りのスイスの腕時計メーカー。その限定モデルがどうしても欲しくて、大学生の頃に全ての貯金を使って購入した。それ以来、俺は社会人になっても毎日のようにその腕時計を身に着けていた。

「そういえば、最近つけてるの見てないかも。あの腕時計どうしたの。もしかして壊れた?」

「アホ。そう簡単に壊れるわけないだろ。三百万以上する時計なんだから」

「ええええ⁉ あの腕時計そんなに高かったんだ」

さらっと値段を告げれば、驚いたように明が声を上げる。

「じゃあ大事にしまってあるの?」

「いや、今は人に貸してる」

「貸してるの⁉ 三百万以上もする腕時計だよ」

信じられないんだけど……と、明が呟く。

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