強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「誰に貸したの?」

「……昔からの知り合い。そういえばまだ返してもらってないな」

「それって大丈夫? 真夜、騙されてない? その人そのまま真夜の腕時計返さないのかもよ」

「いや、それはないよ。俺はそいつのこと信頼してるから。きっと思い出して俺に返してくれるだろ」

俺からそいつに腕時計を返すよう言ってもいい。でも、できれば自分で思い出してほしい。そして、俺のところに返しに来てほしい。


そう約束してあの日、俺は腕時計をそいつに預けたんだから……。


すると、明が何かを思い付いたのかハッとした顔で俺を見た。

「もしかして、知り合いの人に貸した腕時計が返ってこないから、その代わりになるのが欲しいの? それなら同じブランドがいいよね」

「えっ……ああ、そうだな」

「ちょっと待ってね」

明はそう告げると、テーブルの端に置いていたスマホに手を伸ばした。

何かを調べているのか一人でぶつぶつと呟きながら、しばらくするとその視線が恐る恐る俺へと向けられる。

「……真夜、ごめんね。誕生日プレゼントなんだけど、少し時間もらえるかな。今すぐにはあげられそうにないかも」

たぶんさっきスマホで俺のお気に入りブランドの腕時計について調べたのだろう。そして、その金額を知って、自分では到底買えそうにないと思ったのかもしれない。

それでも、正直に買えないと言わずに、時間をかけてお金を貯めてから何とかして買おうとしているところは明らしい。

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