強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~



そして、その週の土曜日。

待ち合わせ場所である Viola Luna の最寄駅へ向かうと、そこにはすでに千華ちゃんの姿があって、私の到着を待っていた。

「遅いですよ、明さん!」

「えっ、そうかな」

少し早めに着くように家を出たはず。

腕時計を確認すると、待ち合わせ時間である十一時の十分前。

遅刻はしていないけれど。どうやら千華ちゃんはだいぶ早く到着して、私のことを待っていたらしい。


Viola Luna は、この駅からでもすでにその外観が見えるほど近い距離にある。

話をしながら歩いて数分で到着すると、目の前にそびえ立つ立派な外観を見上げながら、千華ちゃんが感嘆の声を上げた。

「やっぱり大きいですねー」

「そうだね」

その隣で私も頷いてしまう。


地上三十八階、高さにして百五十メートルは超える、シヅキホテルグループ最大規模のホテル Viola Luna。

私がここへ来るのは去年の九月、大学時代の友人の結婚式に参列したとき以来になるけれど、いつ来ても圧倒されてしまうほどの大きさだ。


真夜は、こんなに巨大なホテルの総支配人を務めているのだからやっぱりすごいなと思う。

それと同時になんだか自分とは遠い人のように感じてしまった。

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