強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
思えば、私の記憶にある真夜は、いつも人の輪の中心に立ってリーダーシップを発揮しているような人だった。

頭の回転が早くて、どんなことが起きても慌てずにゆったりと構えている。加えて、誰に対しても裏表なく丁寧に接するから男女関わらず人気者で。

私はそんな真夜のことをいつも頼もしく感じていたし、どんなことが起きても真夜がそばにいてくれたら大丈夫なような気がしていた。


だから七年前のあの日。


真夜から仕事で三年間バリへ行くことを告げられたときは、まるで自分の身体の一部を取られてしまうような深い喪失感を味わった。

それくらい私にとって真夜は、そばにいることが当たり前の存在だった。


「明さん、早く行きましょう!」

「あっ、うん。そうだね」

ぼんやりと真夜のことを考えていると、千華ちゃんに声を掛けられた。私は、弾んだ足取りで歩き出す千華ちゃんのあとを慌てて追いかける。

回転ドアのエントランスを抜けると、開放感のある吹き抜け構造のロビーへと出た。

エレベーターに乗り込むと、最上階まで一気に上がる。

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