強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
中央にあるビュッフェ台にはたくさんの料理が並んでいて、どれもとても美味しそうだ。

特に、ローストビーフのカットサービスには多くの人が集まっているし、デザートコーナーも充実していて、ケーキやプリン、ゼリーなどスイーツを始め、メロンやパイナップルなどのフルーツも並んでいる。

それぞれ食べたいものをお皿に乗せてから席へと戻ると、千華ちゃんのお皿には溢れそうなほどたくさんの料理が乗っていた。

「千華ちゃんそんなに食べられるの?」

「はい。全部の料理を制覇したいと思います」

いただきます、と千華ちゃんが両手を合わせてさっそく料理を食べ始めた。

「んー! 美味しい~」

頬に手を添えて笑顔になる千華ちゃんを見て、私も料理を食べようとすると、


「失礼します」


きっちりとしたスーツ姿の男性が、私たちのテーブルへとやってきて深々と頭を下げた。

「私、当レストランの責任者を勤めております中森ともうします。総支配人の奥様でいらっしゃいますよね」

‟総支配人の奥様„

その言われ慣れていない言葉にきょとんとした顔をしてしまうと、中森さんが再び尋ねてきた。

「姿月総支配人の奥様の明さんでいらっしゃいますよね」

「あっ、はい」

そこまで言われて、ようやく総支配人の奥様が私のことだと気が付いた。

慌てて頷くと、中森さんがホッとしたような笑顔を見せる。

でも、どうして私のことを知っているんだろう。

レストランに入るときもチケットを渡しただけで、名前は名乗らなかったはずなのに……。

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