強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「明さんすごいですね。レストランの責任者がわざわざ挨拶にくるなんて。さすが総支配人の奥様。なんだか一緒にいる私までVIP扱いされた気がします」

「VIPって……」

それは大袈裟だと思う。

私はイスに腰を下ろすと、大きく頭を振った。

「私なんてぜんぜんすごくないよ」

「そんなことないですって。だってよく考えたら明さんは未来の社長夫人ですもん。しかも大企業シヅキホテルグループの!」

確かに、このままいくとそうなるのかもしれない。

今の真夜はこの Viola Luna の総支配人だけど、いずれはお父さんの跡を継いでジヅキホテルグループの社長になる。

そうなれば私は千華ちゃんの言う通り社長夫人。でも、私なんてぜんぜんすごくない。

真夜と結婚したのだって、彼に好きになってもらったわけじゃなくて、お互いの父親に勝手に決められてしまったから。


そういえば真夜は、私との結婚をどう思っているんだろう……。


そのことについて本人の口から聞いたことがなかった。


好きでもない相手と結婚するなんて嫌じゃなかったのかな。

そう思ったら胸がズキンと痛んだ。



『――俺は好きだよ、明のこと』



先日、真夜に言われた言葉を思い出す。

だけどあれはきっとあの場限りの言葉で本気じゃない。

子供の頃から何度も何度も何度も告白をして、そのたびに振られ続けてきたんだ。そう簡単に真夜が私のことを好きになるはずないことくらい分かっている。


私の初恋は叶わないまま終わったんだから……。

< 70 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop