強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
寂しい気持ち
*
「たくさん食べましたね」
十一時半のスタートから制限時間の二時間が経過すると、私と千華ちゃんはビュッフェ会場のレストランを後にした。
エレベーターで下の階まで降りてロビーを歩きながら、千華ちゃんが満足そうにお腹をさする。
全種類の料理はさすがに食べられなかったけれど、半分は制覇したと思うくらい千華ちゃんはよく食べていた。
「本当に美味しかったです。明さん、誘っていただいてありがとうございました」
千華ちゃんが丁寧に頭を下げる。
「喜んでもらえてよかった。また一緒に行こうね」
「はい! あっ、でも、次にここの料理を食べるのは私の結婚式のときにします」
「それじゃあそのときは私も招待してね」
「もちろんです。なので、明さん。旦那さんに頼んで結婚式の費用を少し値引きしてもらえませんか」
「うーん。それはどうだろうね」
「やっぱりダメですよね~」
そう言って、千華ちゃんは恥ずかしそうにヘヘッと笑った。
それから、彼氏が車で迎えに来ているという千華ちゃんとはロビーで別れて、私は一人でこれからの予定を考える。
さっきは前を通り過ぎるだけだったけれど、せっかくここまで来たから保しなの支店に顔を出してみようかな。
店主を務めているいとこの光輝君とも久しぶりに話がしたいし。