強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
この時間だとお昼の営業がだいぶ落ち着いてきた頃だから行っても迷惑にはならないはず。

そう思って、エレベーターホールへ戻ろうとしたときだった。


「――わっ!」


背後から何かがドンと勢いよくぶつかってきた。慌てて振り返ると、男の子が尻もちをついている。

「大丈夫?」

座り込んでいる男の子の脇に手を入れて持ち上げて、その場に立たせる。

すると、少し離れたところから男の子の母親らしき女性が慌てた様子で近づいてくるのが見えた。妊婦さんなのかお腹が大きい。

晴斗(はると)! 急に走り出したら危ないでしょ」


――晴斗?

その名前、どこかで聞いたことがあるような……。


男の子の母親に視線を向けると、向こうも私を見ていたようで、目が合うとハッとした表情に変わった。

「もしかして、明ちゃん?」

名前を呼ばれて、ようやく私も気が付く。

志穂(しほ)さんですか?」

よく見るとその女性は、いとこの光輝君の奥さんの志穂さんだった。

会うのはだいぶ久しぶりな気がする。四月の私の結婚式には光輝君だけが出席していたから。

志穂さんは妊娠中と聞いていたけれど、もうだいぶお腹が大きい。

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