強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
志穂さんと一緒にいる男の子は息子の晴斗君だ。

最後に会ったときはまだ小さな赤ちゃんだったけれど、いつの間にかこんなに大きくなったんだ。確か、今は四歳ぐらいだと思う。


「ごめんね、明ちゃん。晴斗がぶつかって」

「いえ、私は大丈夫です。晴斗君は大丈夫?」

そう言って、晴斗君の顔を覗き込むと「だいじょーぶ!」と元気な声が返ってきた。

「ほら、晴斗。ちゃんと謝りなさい」

母親の志穂さんに少しだけ厳しく注意されて、晴斗君はしょんぼりしながらも「ごめんなさい」と言ってペコッと頭を下げた。「大丈夫だよ」と私も笑顔で返すと、志穂さんが思い出したように口を開いた。

「そういえば明ちゃん。遅くなってしまったけど、結婚おめでとう。私、お腹も大きいし、晴斗もいるから、せっかく結婚式に招待してもらったのに参列できなくてごめんね」

「いえ、気にしないでください」

光輝君から聞いた話によると、私たちの結婚式の頃の志穂さんは切迫早産というものになっていたらしい。赤ちゃんが予定日よりも早く産まれてきそうになっていて、お医者さんに自宅で安静に過ごすように言われていたそうだ。

「お腹は大丈夫なんですか?」

ワンピースの上から大きなお腹をさすっている志穂さんに尋ねると、彼女は明るい表情で頷いた。

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