強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「ええ。なんとか回復して安静解除がでたから。あとは来月の予定日まであまり無理せずに過ごさないと」

「来月ってもうそろそろじゃないですか」

改めて志穂さんの大きなお腹を見つめる。

「こんなところまで来て大丈夫なんですか?」

その大きなお腹ではとても歩きづらそうだ。それに、晴斗君も一緒に連れて、志穂さんはどうして Viola Luna に来ているんだろう。

すると、志穂さんがお腹をさすりながら答える。

「主人の忘れ物を届けにきたの。仕事で必要だから。ここまでなら来られると思ったけど、いざ来てみたらやっぱり疲れちゃうわね」

「大丈夫ですか。とりあえず、あそこに座りましょう」

「ええ。そうするわ」

私は志穂さんの腰に手を回して支えながら、フロントの近くにあるソファまで一緒に歩いた。そのあとを晴斗君も付いてくる。

ソファに腰かけると、志穂さんは「ふぅー」と息をついた。

「スタッフさんにどこか横になれる場所があるか聞いてきましょうか」

「ううん、大丈夫。ありがとう。ここに座って少し休めば楽になると思うから」

志穂さんはそう言うけれど、私は心配になってしまう。すると、

「ママ~。パパの忘れ物届けたら公園に遊びに行くって約束したでしょ。早く行こうよー。ねぇねぇ、立ってよー」

晴斗君が志穂さんの手をつかんで、何とか立たせようと引っ張っている。そんな晴斗君に志穂さんも困り顔だ。

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