強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
シャカシャカシャカシャカ……と、納豆を混ぜながら、真夜がふわぁと大きなあくびをした。

たぶんまだ眠たいのだろう。仕事が忙しいのか、昨夜の帰宅も日付が変わる頃だったから。

真夜は、混ぜて糸を引いた納豆をお米の上にたっぷりと乗せた。

「あっ、そうだ。俺、来週出張になりそう」

「どこに行くの?」

「デュッセルドルフ」

「ジュッセ……デュ……デュッシュル」

「デュッセルドルフ」

「デュッ……ってどこにあるの?」

聞き慣れない地名に何度も噛んでしまうと、真夜がもう一度ゆっくりと教えてくれた。それでもやっぱり言えなくて諦めた。

「ドイツの西部にある都市」

「ドイツなんだ」

「そこにうちのホテルの建設計画があるから、その視察で一週間くらい行ってくる」

真夜の実家は、国内外に多くのホテルを経営している大手高級ホテルチェーン『シヅキホテルグループ』。

その御曹司で、跡取りである真夜は、現在、東京のベイエリアにあるグループ最大規模のホテル『Viola Luna』の総支配人を務めている。

シヅキホテルグループは、私の実家が経営している和食料理屋『保しな』を長年ご贔屓にしてくれている常連さんで、大事な打ち合わせや接待などでよく利用してもらっている。

両家とも親しい間柄なので、私と真夜も子供の頃から交流があり、いわゆる幼馴染みという関係だ。
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