強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「ランチビュッフェのあとは、たまたま志穂さんに会ったの。ほら、光輝君の奥さん。分かる?」

『ああ、知ってるよ』

「それで、いろいろあって息子の晴斗君と公園で遊ぶことになって」

『いろいろってなんだよ』

真夜に突っ込まれたけれど、そこの説明まで詳しく話すのがめんどくさくなったので省略することにした。

「まぁ、いろいろあったんだよ。それで、晴斗君と公園で遊んだんだけど、四歳のパワーはすごいね。たった一時間遊んだだけでもうヘトヘトだよ。それで今ソファに倒れてたところ」

『はは、そうか』

電話の向こうで真夜が笑っている。その笑い声を聞きながら私は言葉を続けた。

「公園で遊ぶのなんて何年ぶりだろう。疲れたけど、やっぱり身体を動かすのはいいね。ほら、美味しいお昼ご飯を食べて、そのあとは外で遊ぶなんて、健康的な一日だったでしょ」

『そうだな』

私の言葉に真夜は優しい声を返してくれた。

その声が何だかとても心地よく感じて、ずっと聞いていたくなってしまう。

そういえば、真夜とは子供の頃からの付き合いだけど、電話で話をした記憶はあまりないような気がする。だから新鮮なのかもしれない。

いつもよりもしっかりと耳に届いてくる真夜の優しい低音の声に、なんだか胸がキュッと締め付けられた。


真夜に会いたいな……。


ふとそんな感情が込み上げてくる。

真夜のドイツ出張は一週間。

二日前の木曜に日本を発ったから、帰国日まではまだあと五日もある。

そんなに会えないんだ……。

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