強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
ほんの最近まで、七年間も真夜とは音信不通の生活をしていたはずなのに。

結婚して一緒に暮らしているうちに、昔みたいに真夜がそばにいることが当たり前になっていた。

だから、一週間も会えないのは寂しい。

そんな気持ちがつい口からこぼれてしまった。


「真夜は、予定通りに帰ってくる?」


そう言ってから、ハッと気が付いた。

私は何を言っているんだろう。

これじゃあまるで寂しいから早く帰ってきてと言っているみたいに聞こえてしまう……。


真夜が出張へ行ってから、この二日間は寂しさなんて感じなかったのに。この電話のせいで、真夜の声を聞いたら会いたくなってしまった。


でも、たぶん会いたいと思っているのは私だけなんだろうな。


真夜は、私なんかいなくても何とも思っていないはず。そう考えたら虚しくなった。

勝手に一人で落ち込んでいる私の耳に真夜の声が響く。

『そうだなぁ。こっちでの仕事も今のところ順調だから、予定通り来週の木曜には帰るよ』

「ふーん、そっか」

寂しい気持ちを見破られないようにしてなるべく素っ気ない返事をするけれど、

『帰国日の確認するなんて。もしかして明、俺がいなくて寂しい?』

「えっ」

本心を見破られてドキッと心臓が跳ねた。


どうして真夜はいつも簡単に私の心を読んでしまうんだろう。

そしてたぶんここで正直に‟寂しい„と伝えられたら可愛いんだろうけれど……。


「寂しくないから」


口から出たのは本心とは反対の言葉だった。

それに対して真夜は少し黙りこんだあとで「そう言うと思った」と静かに笑った。

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