強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~

思えば、私は子供の頃からそうだった。

素直に‟寂しい„と伝えるのが苦手。

あのときだってそうだ。


中学生の頃、自宅療養を続けていた母の検査結果が悪くなり再入院になった。

その夜、寂しくて部屋で一人で泣いていると、一階のお店で開かれているシヅキホテルグループの会食に来ていたはずの真夜が突然、私の部屋にやってきた。

‟おばさん入院したんだって? 寂しがってる明を慰めてやるから。ほら、ここに座りな„

真夜は、自分が座っているベッドの隣に私を呼んだ。

‟ぎゅーって抱き締めてあげようと思って„

私はそんな真夜の優しさをはね付けた。でも本当は真夜に抱きつきたかった。そうしたら寂しい気持ちがなくなると思って。

でも、できなかった。

そのあと、お酒をたくさん飲んで眠くなったらしい真夜は私のベッドで眠ってしまった。

その手をそっと握ると、真夜の体温が伝わってきて、それまでは我慢できていた寂しい気持ちが一気に溢れてきた。私の瞳からは自然と涙が出ていた。

< 82 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop