強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「おめでとう千華ちゃん。よかったね」

「ありがとうございます。強く願っていれば叶うものなんですね」

心待ちにしていたプロポーズを受けた千華ちゃんからは幸せオーラが滲み出ていて、私まで幸せな気持ちになった。


それから就業開始の時間になり、経理部全体のミーティングを終えてから業務に入る。

しばらくは黙々と仕事をしていたけれど、隣の席でキーボードを打っていた千華ちゃんの手がふと止まった。

「そういえば、明さんのときはどうだったんですか」

そんなことを尋ねられたので、つい電卓を叩く手を止めてしまった。

「どうって?」

「プロポーズですよ。明さんは旦那さんからどんなプロポーズがあったのかすっごく興味があります」

教えてくださいよー、と興味津々な様子で私を見つめる千華ちゃんには申し訳ないけれど、期待通りの返事はできないと思う。

「私は、プロポーズはなかったよ」

「えっ。なかったんですか?」

「だって私たちは千華ちゃんたちとは違って恋愛結婚じゃなかったから」

「えー。それでも一言くらい何かなかったんですか」

「うーん……ないね」

思い出そうとするけれど、やっぱりないものはない。

すると千華ちゃんは「そうなんですか」と残念そうに呟いて、再び仕事へと戻った。

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