強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
泣いていいよ
*
目的の水族館へ到着すると、さっそくチケットを買って館内へと入る。
「真夜って、水族館好きだったの?」
すいすいと魚が泳ぎ回る水槽を二人で並んで眺めながら、私はふと尋ねてみた。
「いや、別に。好きってわけでもないけど」
「じゃあどうして水族館に来たの?」
「リフレッシュできそうだと思って」
「ふーん」
それからのんびりと水槽を見て回っていると、しばらくしてこれまでとは雰囲気がガラッと変わった幻想的な空間へとやってきた。
「わぁー」
中央にある丸い形をした水槽と、壁面にある水槽には様々な種類のクラゲが展示されている。
ふわふわと漂うその様子は、見ていてとても癒される。顔を近付けて、水槽の中を覗き込んでいると、ふと思い出した。
――もしかして、前にもこの水族館へ来たことがあるかもしれない。
私は、隣の水槽で透明なクラゲを眺める真夜の横顔をそっと見つめた。
あのときも、私の隣には真夜がいた。