会長候補はSweets☆王子!?
「大内君……ついでに、あたしの休学届も正式に受理されたの」

 おどけるような口調から一転、寂しげに告げる横顔。

 今、彼女の真横に咲いているのは、青紫色の鐘形の花を持つキキョウ。
 別名『バルーン・フラワー』の由来は、その風船みたいなつぼみから付けられたのだと、塚本さんに教わったばかりだった。


「すぐに復学出来ますよ。だから、それまでは大人しく療養して下さいね」

 俺はことさら明るく塚本さんに話し掛ける。


「入院してる間に大内君と同じ学年になったら、何だか笑っちゃうよね?」

「その時は、クラスも同じになってたりして」


 俺達は、夕暮れの病院の花壇の中で、小さく笑いあった。


「……ここの病院、塚本さんにとっては楽園ですね」

「うん。『天国』みたいだよ」


 車椅子を押す俺の方に振り向く彼女の髪から、ふわっとバラの香りが漂った。


「バラ……ですよね」無意識の内に俺は声に出してしまっていた。


「そうだよ。よく分かったね。
 これ、『マリン・ロージア』って言って、青いバラをイメージした香水なの」

(青いバラ……花言葉は、『奇跡』『祝福』だ)
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