会長候補はSweets☆王子!?
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「ま、バレちゃったら仕方ないよねー。
 真希ちゃん、君って可愛くて世間知らずで本当に利用価値があったんだけど、よりにもよって、あんなおバカ男の池永隼人なんかと、仲良くするから」


 林君はヒステリックな含み笑いをもらしながら、腰を抜かしたあたしにじわじわ近付いて来る。

「ほら、僕の家ってさ~前に言ってたじゃん?
『小麦粉なんかを専門に取り扱う貿易商』だって。
……実は、あれ半分本当で、半分はウソ!
 我が家は、代々西日本と東アジア各国との闇取引を専門に扱う、密輸の元締めだったんだよねー。残念でした!」


 てへっ。と舌を出す林君の笑顔は、いつもと変わらないだけに、あたしは尚更恐ろしくて、頭の中が真っ白になっていた。


「そこに積み上げられてる小麦粉……『ダブルツリー貿易産業』の製品を密かに密輸した『レアサンド』の原材料とすり替えて、福岡県内の先端技術工業メーカーに、高値で売りつけてたんだよ?

 バイク便の配達は、西村陣営の『北龍』の皆さんが以前バイトで何も知らずに手伝ってくれたことがあって、愉快だったねえ」


「だから、あなたはあたしに接近したの!?
 お父様の、レアサンド密売取り締まりを妨害する為に!!」

「正解! 真希ちゃんはおりこうさんだねえ」

 そう言って、あたしの頭を撫でようとする彼に

「触らないで!! 信じてたのに……あたし、林君のこと信じてたのに」


 涙が次から次に溢れ出て来る。そして、コンクリートの床を濡らしていく。

 まるで通り雨みたいに。
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