会長候補はSweets☆王子!?
「坊ちゃん! 誰か近付いてます!!」

 倉庫の出入り口をガードしている屈強な黒服の男の人たちが、林君に耳打ちする。


「お前ら、いざとなったらここに施錠して、矢田部の娘を閉じ込めろ!!」


(矢田部の娘? あたしは、もう『真希ちゃん』って呼んでもらえないんだ)


 自分の命がどうなるか分からない時に、あたしはそんなことをぼんやりと考えていた。


『真希お嬢様ーっ!!』

 あたしの耳に、遠くからアドルフォさんの声が聴こえる。

「アドルフォさん!?」

 黒服たちは舌打ちして、スーツの中のホルスターから銃を取って、一斉に駆け出して行った。


 しばらくして、車のタイヤがスピンする凄まじい摩擦音と一緒に、何人もの悲鳴が響き渡り、銃声と一緒に目の前の岸壁に次々と何かが落ちる音。


「ちくしょーーーっ!!」林君は、防火設備のロッカーから真新しい斧を取り出すと、あたしにそれを向ける。 
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