会長候補はSweets☆王子!?
「な、何今の?」あたしは、伏せたまま火柱を上げる倉庫を虚ろな目で見る。


「『粉塵爆発(ふんじんばくはつ)』です」アドルフォさんが、スーツの小麦粉をパパッと叩く。

 梶山君は、まだ火のくすぶる爆発現場にバイクで引き返すと、ボロボロになって袋の間に埋もれていた林君を背負って運び出した。


 頭を押さえながら平泳ぎしていた黒服たちが、沖合いの警備艇に引き上げられて行く。

「お嬢様、ご安心を。峰打ちですから!」とアドルフォさん。
 
 ベンツのバンパーが、4箇所へこんでいる!!


「うう~ううう~」

 顔中粉まみれにして、激しく咳き込んでいる林君は、焦点の定まらない虚ろな瞳で、涙とよだれを流していた。


「隼人君、後は警察と消防に任せましょう」

 アドルフォさんは、まだ怒りで顔を紅潮させている池永君に優しく声をかける。


「……でも、当局が到着するまでには、まだ時間が若干あるようですね」

「そうだな」と梶山君。

「俺さ、今ギターの張り替え用の、長い長い弦持ってるんだけど?」

 士堂君がニヤニヤ笑いながら、林君にスチール製ストリングを見せ付ける。



「ぎゃああああああああああああああ~!!!!!!」


「うわっ!? エグッ!!」と大内君。


 小倉の港にこだまする、絶叫とカモメの鳴き声を遠くに聞きながら、あたしは池永君の肩にもたれて、その場を離れた。
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