会長候補はSweets☆王子!?
「安心しろよ。俺はチーマキちゃんの『あの写真』なんか興味ないから」

「え?」

 
 涙で濡れて、未だ嗚咽が収まらないあたしの頬を、池永君は右手の指先で拭います。

 そして、彼はスマホのSDカードリーダーから、朝のチカン紳士さんが持っていた隠し撮りメモリーデータを取り出すと


 パキッ!!

 左手人差し指と親指に挟んで、勢いよく割りました。


……あたしを脅迫するつもりじゃなかったんでしょうか?
 池永君の口から、もっと不可解な言葉が出て来ました。

「写真なんかより、実物のチーマキちゃんに興味があるし」

「ほ、ほえっ?」

 力なく池永君の高い位置にある顔を見るあたし。


「初めて会った時から、好きだったんだ……」


 教室内が、一瞬で静寂と緊張の極地に変貌します。


「チーマキちゃんの、甘い香りが」


 ??????

 この人は、一体何を言っているのでしょう? あたしの香り?


 首すじやわきの下、胸元には普段からほんのちょっぴりだけど、香水を付けています。


『SWEET LIPS(スウィート・リップス)』という、ヨーロッパ製バニラエッセンス・フレーバーを配合したコロン。
 お母様のフランス土産です。
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