ストロベリーキャンドル
失って手に入れたモノ
*
仁とお付き合いをスタートしてから半年が過ぎた。
最初は呼び捨てで呼ぶことも敬語を使わないということも、
全てが慣れないことの連続で戸惑ったりもしたけれど、
今ではだいぶマシになったと思う。
仁はスマートに物事を整理してくれる。
だから会社にもまだバレていない。
お互いの家を行ったり来たりしたり、
朝早くに会社に集合したりすることで、
二人きりの時間を取っている。
もうあの頃の私じゃない。
葛城さんに振り回されて悲しくて
泣いていた私はもういなかった。
「奏音。おはよう」
「七海、おはよう」
隣のデスクに座る七海に挨拶を返す。
七海も葛城さんと順調なようで、
いつも惚気話を聞かされていた。
でも、私にも新しい彼が出来たからなのか、
それに半年前のように嫌悪感を感じることはなく、
素直に聞くことが出来た。
最近ではもう、
葛城さんのことを聞いても大丈夫になってきている。
「それにしても、近頃奏音は綺麗になってきたわよね。
彼氏でもいるの?裕也がしつこく聞いてくるのよ。
あれは絶対男が出来ただろうって」
その話題にギクリとする。
葛城さんが私のことを気にしている?
それはまずいわ。今ここでバレてはダメよ。
私の幸せが、音を立てて崩れてしまうもの。
「彼氏なんていないって、葛城さんにも言っておいてよ。
多分、ダイエットに成功したからかな?
前と違って見えるのはそのせいよ」
「そう?奏音もそろそろいい人見つけなさいよ。
結婚しないと、どんどん遅れるわよ」
「そうだね、結婚か……」