ストロベリーキャンドル
「一ノ瀬さんは嫌がっていた。
こんなこと自分から望むはずがないよ」
「どうして神崎さんにそんなこと分かるんですかっ!
不倫していたのも、奏音だったのね!」
「ご、ごめんなさ……」
「ごめんなんて聞きたくないのよ!気持ち悪い!
ずっと私のこと笑っていたんでしょう?
友達のフリして笑っていたんだわ!」
わぁっと泣き出した七海に、
なんて声をかけていいか分からなかった。
葛城さんが慌てて声を上げ始めた。
「な、七海。落ち着け。これは奏音から誘ってきたんだ。
俺はずっと、奏音に言い寄られていて困っていたんだ。
俺は悪くない。分かってくれ」
「なっ……葛城さん……」
「それはないよ」
全部私に責任を押し付けようとした葛城さんは
含みのある笑みを浮かべたけれど、仁が声を上げた。
葛城さんも七海も顔を上げて仁を見る。
私は、罪悪感から仁の顔は見られなかった。
「ど、どうしてそう言い切れるんですか?」
七海が聞く。仁はそれに続けて言った。
「確かに初めは一ノ瀬さんが悪かった。
出来心ってやつだろう。
人を好きになる気持ちは誰にも止められないからね」
「そんな……神崎さんは味方するんですか?」
「まあね。誰にでも魔がさすことはある。
勿論許されることではないし、一番傷付いたのは七海さんだから、
償わなきゃいけない。
でも、葛城の言ったことは1つだけ間違いがある」