ストロベリーキャンドル
仁がかばってくれている。
どうして?私に失望してもおかしくないのに、
私を守ってくれようとしている。
そんな仁の優しさが、痛かった。
「ま、間違いってなんだよ。
俺は奏音に確かに言い寄られて、今だって……」
「一ノ瀬さんが望んでお前とこんなことをするはずがないって
言っているんだ」
「何?」
「だって、奏音は俺の彼女だからね」
仁の言葉に、みんなが息をのんだ。
私はゆっくりと仁の顔を見る。
仁は私を見ると、静かに微笑んだ。
どうして、今、それを……?
「えっ、奏音、まさか……彼氏いたの?」
七海が驚いたように目を見開いて私を見た。
もう泣いてはいなかったけれど、目が真っ赤だった。
葛城さんもびっくりしたように私と仁を交互に見ている。
そして震える手で私を指差した。
「お、お前……俺が好きじゃ、なかったのか……!」
「奏音。言うんだ。大丈夫だから」
仁の優しい声がする。
込み上げる涙を堪えて、
私は仁のスーツを握りしめて言った。
「わ、私は……仁が、好きです」
「い、今……仁って……」
七海は口に手を当てて仁を見ていて、
葛城さんは赤い顔で私を見ていた。
ずっと、怯えていた。
バレてしまったら嫌われてしまうと。
好きだという気持ちを自覚しても、
私は仁を好きだと言う資格すらないのではないかと思っていた。
でも、仁は私をかばってくれた。
私を守るために、今、私を彼女だと公言してくれた。
どこまでこの人は優しいのだろう。
本当なら、縁を切られてもおかしくはないのに。