ストロベリーキャンドル
「こういうこと。だから七海さん、安心して。
確かに奏音は間違いを犯したけど、
今は葛城のことなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
今のこの状況は葛城が悪いと思う」
「ゆ、裕也。どういうことよ!」
「ち、違う。聞いてくれ、七海。
ほんの出来心だったんだ」
「信じられない。私のこと、好きじゃないの?」
「す、好きだよ。ただ、俺も疲れていたんだ。
そんな時に言い寄られたら、ふらつきたくもなるだろう……」
ここまで来ても言い訳を繰り出す葛城さんはすごい。
しどろもどろになりながらも、ちゃんと自分の言い分は通すことが出来る。
オロオロして何も出来ない私とは違うんだ。
「本当に?ちゃんと私のこと、好き?」
「ああ。好きだ。信じてくれ」
七海は涙を拭うと、葛城さんの傍までいき、腕に絡みついた。
そして私を睨みつける。
俯きたかったけれど、逃げちゃいけないと思って七海の目を見た。
「あんたなんか友達じゃない。
何もなかったように、この会社でのうのうと仕事していくなんて思わないで。
このことは言いふらしてやるんだから。
そうしたら、ここにあんたの居場所はないわ」
「ご、ごめんなさい。本当に、私が悪かったわ」
「ふん。今更なによ。
もう、あんたの言葉なんか信用しないわ」
冷たい目が向けられて、びくりと肩が震えた。
七海はにっこりと葛城さんに笑いかけると、
明るい声で言った。
「裕也。今夜はデートに行きましょう。
もっと一緒にいる時間を増やさないと、危ないんだから」
「あ、ああ。勿論、行こう」
「七海さん」
仁が七海を呼んだ。
七海は眉を上げて仁を見る。
彼はすまなそうに微笑むと、
ゆっくりと頭を下げた。