ストロベリーキャンドル



つらつらと流れるように話す彼の言葉を、
しっかりと耳に聞き入れる。


彼の「好き」という言葉が響いて、
ほわっと胸の中が温かくなるのを感じた。


まさか、そんな頃から私のことを見つけてくれていたなんて
思ってもいなかった。


彼に、それほどまでに好かれていたことも、私は知らなかった。


でも、それならどうして?


不倫なんかしているのを知ったのに、
どうして嫌いにならなかったの?


どうして、失望しなかったんだろう。


「初めて声をかけられた日、チャンスだって思った。
 やっぱり君はいい子だった。
 でも、その日俺は君と葛城が2人で会ってキスしているのを見た。
 葛城には奥さんがいるのに、不倫しているのかと思ったら、
 君が心配になったんだ。


 不倫なんて絶対にいいことじゃない。
 苦労をするのに、どうしてそこまで葛城を追うのかなって。


 そして思ったんだ。
 そうだ、俺が幸せにしてあげよう。
 君を救ってあげようって」


「じ、仁……」


ぽん、と頭を撫でられた。そして彼は言う。











「言っただろ?その秘密によって君の何かが失われても、
 俺は奏音のそばにいるよって」









また、涙が溢れた。
こんな素敵な人、他にいない。
私は確かに、仁に救われたんだ。


どうしてこんな素敵な人がいるのに、
あんなに葛城さんを想っていたんだろう。


どうして、報われない恋に縋っていたんだろう。


本当に愛情をくれる人は、こんなにもそばにいたのに。




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