ストロベリーキャンドル
*
「忘れ物はない?」
「大丈夫。大きい荷物は送ってあるし、身軽で楽だよ」
翌週になって、仁がいよいよアメリカに発つ日が来た。
心配でさっきからこうしてしつこく荷物確認をしている私を
嫌がる様子もなく、仁は笑って対応してくれてる。
今日から私も、アサヒ文具の社員だ。
1人で1か月を過ごすんだし、気を引き締めないと。
「しかし、昨夜はすごかったなぁ。
最後の夜だからって、奏音が大胆だったし」
「そ、それは言わないで!」
かぁっと赤くなる。
昨夜の行為を思い出すと、自分でも赤くなるくらい恥ずかしい。
しばらく会えないということは、こういうことも出来ない、
そう思って感情が高ぶってしまって、
随分大胆だったように思う。
そのことをからかわれて、頬を膨らませたけれど、
仁は笑って私を抱きしめた。
「かわいいな、奏音は。あーあ、離れたくない」
「私も」
「行ってくるよ。体調には気を付けて、
夜はあまり出歩かないでよ」
「うん。仁もね」
じゃあ、と言って仁がカバンを持って玄関のドアに手をかける。
ふいに「あっ」と声を上げた。
首を傾げると、仁はくるりと振り返った。
「忘れ物、あった」
「えっ?」
ちゅっと、啄むようなキスをされた。
何をされたか一瞬分からなくて、ぽけーっと呆ける。
仁はおかしいと言うようにくっくっと喉の奥で笑うと、
ヒラヒラと手を振った。
「行ってくる。じゃあね」
「い、い、行ってらっしゃい!」